天道がよくわかる本
29 家郷信書 その③
弥勒さまへの降命と普渡収円
三山坡の別れより六万年が過ぎ、約束の時が近づきました。なかなか理天に帰ろうとしない児等を見て、さまは悲しみ嘆き、弥勒さまをお呼びになられました。
さまは弥勒さまに申されました。「汝を遣わし、児等を理天へと帰らすために諸仏祖(四億の真人)と共に一度下生させるも、児等がなかなか帰ろうとはしないのはなぜか」
それに答えて弥勒さまが申されました。「私が命に違いて家(理天)に帰そうとしないのではありません。原霊、諸仏祖ことごとく性を迷わせ、あえて帰ろうとはしません。はじめは東土(修行の世界)に行き、さまの命に従って修行をしておりましたが、花の世界に迷い、人身を借りて生死を繰り返す内、紅塵の世にて名利を貪り、教えを説くも振り返らず、実に悲痛な状況です」
さまはそれを聞き、驚き悲しまれ「汝、重ねて世に降り原霊(児等)を救済しなさい」と命ぜられました。
弥勒さまはその命を聞かれ、再三に渡ってその任の重きこと、難しいことを訴え断わられました。さまは蓮座を降り、弥勒さまの許まで下られ、ヒザをついて説得に努められました。弥勒さまはびっくりされ、さまを添え起こして蓮台にお座りいただき、慌てて頭を地に着けて「私の罪をお許し下さい」と申されました。さまは再び申されました。「再び下生し、原霊(児等)を渡し救いなさい。普渡収円は汝でなければできません。多くの誹謗があろうとも、まさに風の過ぎる如く聞き流しなさい。汝、全てに慈悲心を持って児等を感化しなさい」と。それに対して躊躇される弥勒さまを見て、さまはお怒りになられ「吾が命に逆らえば、如何なる罪となるか。陰山に圧せられても良いのか」と申されました。それを垣間見た諸仙仏、諸菩薩は慌ててさまの下にひざまずき、弥勒さまをお許し下さいと懇願し、共に弥勒さまをお助けすることを誓われました。弥勒さまは命に従うことを決められながらもあえて申されました。「諸佛祖(四億の真人)も全て迷っております。原霊を全て救い返すは難しいことです。どのようにすれば良いでしょうか」
それに答えてさまは「吾に妙計があります」と申され、三山坡の別れの時の如く中指を噛み破り、その血をもって涙ながらに血書をしたためられました。「もし縁あればこの書信を見て、急いで性を改めなさい。悪しき気質を改め、悪しき心を滅せば、と再び逢うことが叶います。早く明師を訊ねて法を得て帰りない。早くしないと三災が到り児等を損ないます…」
さまがしたためられたこの血書により、多くの四億の真人が目覚められ、救霊の道が開かれました。今救霊の体制が整えられて普渡収円が進められております。弥勒さまが再三お断りしたのはその命の重大さと、弥勒さまお一人の力ではできない大聖業であることを認識されていたからに他ありません。今多くの真人が目覚め、全ての児が帰って欲しいというさまの思いは、全てを救い尽くすという私たちの志となり、その結集力により普渡収円が為されております。必ず全てを救い尽くして共に帰りましょう。